2017年5月4日木曜日

かわいそうな文鳥(かわいそうなゾウ復讐編)

息子と「かわいそうなゾウ」を読みました。
あまりにゾウがかわいそうで読むたびに泣いちゃうお話です。
今回は動物からの復讐編を作ってみました。
ゾウぢゃないけれど。
「かわいそうな文鳥」
時は第二次世界大戦の中。
場所は文鳥春日部動物公園(ぶんちょうかすかべどうぶつこうえん)。
食糧難、敵に攻撃された時に動物が逃げ出した時の危険性を考慮し、
軍の命令で動物は薬殺処分されていました。
特に文鳥は最優先で処分しなさいということだったのですが、
面(ツラ)の皮が厚いで毒薬の入った注射は注射針が通らず、
グルメなので舌が肥えて毒が入った食べ物は受け付けずで、
最終的に飼育員は餓死という選択を取らざるを得ませんでした。
カゴに残った文鳥の名は「ぴーちゃ」そして「しるきち」。
芸をするので動物園では大人気の文鳥です。
ぴーちゃは会社も経営している、社長文鳥です。
ご飯がこなくなったぴーちゃ社長はつぶやきました。

「腹減ったッピな~、しるきち」
「社長、お腹が空きましたね~。社長の会社に食料とか残ってないんですか?」
「ないッピ。戦争が始まってからすぐに軍事系ビジネス一色に変えたッピ。
戦争は一番儲かるッピ。お前のオヤジの会社はどーしたッピ。アワ玉とか回せッピ」
「うちも同じですよ」
「ダメなオヤジだッピな~」
「社長に言われたくないですよ~。
大体、社長がシャンパンだとかキャビアだとか贅沢なものばっかり食べたがるから、
真っ先に食べ物の予算を削減されちゃったじゃないですか~」
「ここは一発、着文鳥(着メロの文鳥版)でもやってエサをもらうッピ」
「いいですね~、社長」
純粋で素直な文鳥たちは人間に芸を見せることにしました。
芸をするとエサをもらえることを覚えているのです。
文鳥たちは今はやりの「着メロ芸」をすることにしました。
「鳥臭い」はもうすでに他の鳥にやられているので、
差別化のために別バージョンを展開することにしました。
パクリビジネスの基本です。
「オヤジ臭い、オヤジ臭い、あーオヤジ臭い」

文鳥たちは必死に人間の口調を真似る芸をします。
飼育員の方々は必死に芸をする文鳥の姿を見て涙が止まりませんでした。
丹誠込めて育てた文鳥にこんなにけなされて、情けなかったからです。
もちろんエサはもらえません。
「社長、なんだかもらえないですよ。っていうか怒られているかんじですが・・」
「しるきち、戦略を変えるッピよ」
ぴーちゃ社長達はカゴの外に飛び出しました。
受けなかったビジネスと市場は時期をみて見切りを付ける。
ビジネスの基本です。
動物園を脱出した文鳥たちは海で伊勢エビやらマグロ(トロ限定)やらをたらふく食べました。


しるきちは不思議に思いました。
「海の幸は豊富なのに、どうして陸地にはご飯がないのでしょうかね?」
「人手不足と燃料不足が影響しているッピな。もともとこの戦争も石油不足からおこったものだッピ」
ぴーちゃ社長はビジネスチャンスを思いつきました。
「しるきち、来るッピ」
「はいっ、社長!」
文鳥たちは東シナ海に飛びました。
文鳥のカンで、石油が眠っているよーな気がしたからです。
石油資源を確保すれば、食料調達だろうが、武器調達だろうが、
新しいビジネス展開が考えられます。
しかし、広大な海を見て、ちょっと途方にくれる文鳥たち。
どこを掘ればいいのか皆目検討がつきません。
しかし、ぴーちゃ社長はアメリカ軍から一番大きなミサイルを調達(失敬)してきました。
あたりを一気に爆破する計画です。
アメリカ軍の爆弾の威力はすごいものでした。
おおきな爆発が広がりました。
キノコ雲まであがりました。

「ケッピョー!社長、これって大丈夫なんですか?なんだかすごい事になってますよ」
「大丈夫だッピ・・・、多分」
文鳥たちがつかった爆弾は「げんしりょく爆弾」というものでした。
おまけに、天然ガスに引火したせいで、あたり一体は火の海になりました。
文鳥たちはビックリして、逃げ出しました。
失敗したビジネスは速攻で見切りをつけるのがビジネスの基本です・・
っていうか「もう、どーでもいいやな、こりゃ」ってのが本音です。

東シナ海の爆発がきっかけで、世界各国の火山が活動を始めました。
世界規模で大惨事です。
人びとは住むところを失い、作物は火山灰のために全滅、
太陽の日が遮られたので異常気象が各地で発生しました。
世界の人口は半分に減りました。
もちろん戦争どころではなくなり、世界大戦は終わりました。
終戦です。
終戦後のゴタゴタで、
文鳥たちは闇市で魚を高額で売りさばいていました。
「社長ぉ~、最初から魚を売っておけばよかったじゃないのですかぁ~?」
「しるきち、そーでもないッピよ。あのお陰で魚の価格が高騰して高く売れるようになった。
『ぴー』は最初から品薄ビジネスを狙っていたッピな~」
「ええっ~?本当ですか~? ま、そういうことにしておきますね」
二羽は輸送手段のない人間の代わりに魚を捕り、さらにお金を儲けました。
大惨事の原因は自然現象と報道されましたが、
なんとなく事情を把握していた動物園は、
責任のがれのために二羽が死んだことににしました。
文鳥春日部動物公園(ぶんちょうかすかべどうつぶこうえん)には、
いまもひっそりと二匹の文鳥のお墓があります。
めでたし、めでたし。





(2007年so-netブログにて公開版)
http://angeworks.blog.so-net.ne.jp/2007-02-27-1#more